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2020.03.31

今こそ、中小企業はAIやIoTなどのICT技術を活用しよう!

AIやIoTなど、ICTの新技術がビジネスに大きな影響を与えることで、第4次産業革命が進行しているといわれています。AIやIoTというと、大企業やITベンチャーだけが利用する先端技術というイメージをお持ちの方も多いですが、ここ数年で中小企業の活用事例や手軽に導入できるツールが続々と登場しています。身近になってきた最新のICTツールを活用して、一歩先行く生産性向上を実現しましょう。

木佐谷 康(きさたに やすし)

木佐谷 康(きさたに やすし)

プロフィール

IoT、AI経営相談窓口水曜日担当。

中小企業診断士

ITコーディネータ

行政書士

中小企業でも活用できる、おカネのかからないITとマーケティングが得意分野です。スモールスタート&クイックウィンで、できるところからスピード感を持って課題解決に取り組みましょう。お気軽にご相談ください。

AIやIoTなどのICT技術を活用するメリットは?

中小企業を取り巻く環境

人手不足はますます深刻化する一方で、働き方改革による残業時間の上限規制や有給休暇の義務化など、総労働時間は減少する方向に向かっています。現在の厳しい環境を中小企業が乗り越えるためには、同じ時間でこれまでより多くの結果を生み出す生産性向上は避けて通れません。業務効率化や改善活動は既に行っており、生産性向上の施策が乏しいと言われる中で、切り札として期待されているのがICTツールです。政府もIT導入補助金や各種支援策を通じて、ICTツール活用による生産性向上に力を入れています。

中小企業のICT利活用状況

では、中小企業のICTツールの活用状況を考えてみましょう。2018年度版「中小企業白書」によれば、ICTツールが『「十分利活用されている」と回答 した企業の比率は、一般オフィスシステムと電子 メールで55%前後であり、経理ソフト等で約40%、ERP1 やEDI2 で約20%』となっており、中小企業がICTツールを積極的に活用しているとは言えない状況です。このような中で、ICTツールを活用すれば生産性向上と他社との差別化が同時に実現できることから、筆者が担当している公社の経営相談でもICTツール導入のご相談が非常に増えています。

ICT、AI、IoTの基本知識

ここで、ICTやAI、IoTに関して基本を振り返っておきましょう。
ICTとは、Information and Communication Technologyの頭文字をとったもので、コンピュータや通信、ネットワークを活用した情報通信技術のことです。IT(情報技術)と呼ばれることもあり、AIやIoTなどもICT分野の中の一つの技術です。
AIは、Artificial Intelligenceの略称で、日本語では人工知能です。コンピュータに人間の知能に近い判断や思考を行わせようと研究開発されてきました。ここ数年は、AIの第3次ブームと言われ、機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)といった新技術の出現により、大きく進化している領域です。
Internet of Thingsの頭文字をとったIoTは、モノのインターネットとも呼ばれています。従来は、インターネットにつながるのはコンピュータやスマホだけでしたが、テレビやエアコン、工作機械など、様々なモノがインターネットにつながってデータを送受信できるようになっています。AIとIoTは親和性が高いと言われていますが、その理由はデータ量にあります。IoT技術により、様々なモノがインターネットを介してデータをやり取りするようになれば、従来に比べて数千倍、数万倍といったデータが飛び交い、蓄積されることになります。いわゆるビッグデータです。膨大なデータから、傾向の分析や一定条件のデータ抽出を行うには、人間の操作や判断だけでは足りません。そこで、データの特徴点や類似点の抽出にAI技術が活用されています。

AI技術やIoT技術を活用すると、どんな未来が待っているのか?

AIやIoTのイマ

ICTツールの活用とひと口に言っても、オフィスソフトや経理ソフトは分かるが、AIやIoTは中小企業には難しすぎるという意見を頂戴することもあります。確かに、基本技術やエンジンを使ってゼロからシステムを構築するには、プログラミングや環境構築の知識や技術が必要となり、ITの専門人材が少ない中小企業にとってはハードルが高いです。一方、最近ではAIやIoTの技術を応用した比較的安価なツールやサービス次々に誕生しているため、技術的なバックグラウンドが無くても取り入れられる環境が広がっています。

AIが活用できるエリア

では、中小企業でも活用できそうな事業領域について考えてみましょう。
AIでは、画像、文字、音声の認識技術を応用したツールが身近になっています。
画像認識の分野では、店先や店内に設置されたカメラの画像からお客様の数や顔の表情等を分析して、入店率、入店者の年齢・性別、接客中の感情などを表示・記録するクラウドサービスが提供されています。
文字認識の分野では、紙に印刷された文字情報をデジタルのテキスト情報に変換するOCR製品にAI技術が取り入れられることで、文字の認識率が上がり、利用分野が広がっています。印影や取消線が重なった文字や手書文字など、従来では誤読が多かった文字も読み取れるようになっています。
音声認識では、キーボード等の操作が難しい工場などでAmazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーが利用されています。また、音声のテキスト変換技術を使って、会議の議事録の作成や翻訳などが行われています。

代表的なIoTツールと活用事例

IoT技術では、ものづくりの現場で中小企業でも導入しやすい手軽なツールが登場しています。最も代表的なツールとしては、Raspberry Pi(ラズベリーパイ、通称ラズパイ)に代表される小型コンピュータが挙げられます。Raspberry Piは、自由工作キットやプログラミング教材などの教育用コンピュータとして開発されたこともあり、数千円程度と価格も手ごろです。センサーやカメラなどの電子部品を取り付けることが可能で、様々な応用事例のソースコードが公開されているので、サンプルプログラムを見ながら自分でカスタマイズすることが可能です。また、Raspberry Piでも敷居が高いという場合は、スマートフォンにアプリを入れるだけでプレス機械のショット数をカウントしてくれる「生 産性見えた君」やカメラで制御盤を撮影してアナログメーターや数値を記録することで運転状態を監視きる「SOFIXCAN Ω Eye(ソフィックスキャンオメガアイ)」など、機械に一切手を加えずに利用できるツールもあります。

中小企業は、どこからどのようにICT化に取り組むべきか

スモールスタート&クイックウィン

人手不足対策や生産性向上のためにICTやAI、IoTを導入したいと考える中小企業経営者の方が増えている一方で、どこからどのように取り組んだらよいのか分からないというご相談も多く寄せられます。筆者が中小企業のICT化を進めるために最も重要と考えているのが、「スモールスタート&クイックウィン」です。

クラウドツールやスマホアプリの普及に伴い、様々なベンダーが無料で利用できるフリーツールや一定期間は無料のトライアル版を提供しているので、ほとんどコストを掛けずにスモールスタートできます。機能や期間の制限により適用部署や利用人数などが限定されるケースもありますが、コストを掛けないスモールスタートだからこそ、失敗しても容易に軌道修正できます。逆にうまくいって効果が見込めれば、適用範囲を広げた場合の導入効果が試算でき、有料ツールや全社展開が検討しやすくなります。

また、短期で素早く成果を得るクイックウィンの考え方も、これから本格的なICT化に取り組む場合には効果的です。経営者やマネジメント層がICT化に積極的でも、従来の作業環境に慣れている現場の従業員は否定的な場合や最新ツールを使いこなすモチベーションに乏しい状況は多くの中小企業で見られます。身近なところで「小さな成功体験」を経験することで従業員にICT化のメリットを理解してもらい、賛同者を増やしながら徐々にツールの導入を拡大すれば、せっかく導入したのに使われないといった失敗を防ぐことができます。

導入コストをミニマイズするには

スモールスタート&クイックウィンで始めたとしても、ICT化にはそれなりのコストが必要です。導入コストの負担を軽減するために検討したいのが、補助金や助成金です。政府の「IT導入補助金」や公社の「ICTツール導入助成事業」のほか、働き方改革を実現するためのICTツール導入助成や区市町村が管轄する補助金など、様々な行政・支援機関が補助金や助成金を設けているので、是非チェックしてください。

誰に相談するか

また、社内や身近に専門家がいないというのも、多くの中小企業でICT化が進まない原因の一つです。そのような場合には、支援機関の専門家派遣や相談制度を有効活用しましょう。公社では、無料の窓口相談のほか、ICTを含む様々な課題に対して現状の分析や解決策の検討などを支援する専門家派遣制度や、AIやIoTといった先端的なICT技術を活用した生産性向上をサポートする導入前適正化診断などを用意しています。また、商工会議所・商工会や中小企業庁が運営するミラサポなどでも、専門家の派遣制度が用意されています。 AIやIoTを活用したICT化により、生産性向上を実現しましょう。