2023.10.26
情報共有して社員の自主性を育み会社全体もステップアップ!
アイサーク株式会社「情報通信業」
アイサーク株式会社(以下、同社)はITの知識と技術を「業務の改革・改善」「経営の合理化と効率化」等に生かし、人々の役に立つようにと、中原一行代表取締役が2008年に開業。アイサークの由来は「ITの力で技術と人間の架け橋になる」という意味をこめて「I-Tharc」(※)と名付けられたという。
ソフトウェア開発などデジタル技術のプロである同社がなぜ、東京都中小企業振興公社(以下、公社)の支援を受けて、社内DXに取り組んだのだろうか?動機や経緯について中原氏に話を聞いた。
※ I-Tharc/I=IT、T=技術(Technology)、H=人間(Human)、Arc=架け橋
システム導入のきっかけは“体制の見直し”
~バラバラだった管理システムを結合して社員と情報共有
社内業務のシステム化に踏み切った大きな理由は「受注体制の見直し」。これまで仕事はすべて中原氏が受注する一極化体制で、中原氏が多忙となって受注しきれず、仕事が回らなくなることもあった。そこで業務内容や社内状況を社員全員が共有できるシステム導入の必要性を感じたと中原氏は言う。
「これまで受注案件をデータベース化したりスケジュール管理などもツールを使っていましたが、あるものはデータベース管理システム、あるものは表計算ソフトや簡単なプログラムと、システムが点在して管理方法がバラバラでした。デジタル化するのは得意なのですが、社内全体でデータを管理するまで考慮していませんでした。今回、 バラバラになった仕組みを全部結合させれば一気に解決できると思いました」(中原氏) 中原氏は自身が付き合ってきた取引先の名刺や業務内容・履歴をデータベースに取り込み、社員も過去の業務内容が閲覧できるようにした。 「新しいデータベースでは、売り上げや納品までの期間など、過去の案件を閲覧できます。社員は取引先から依頼が来ると、データベースで過去の業務内容を見て、見積もりを作成など私が直接指揮を取らずとも案件を回せるようになりました」(中原氏) また新しいシステムでは、勤怠管理など人事面もスムーズに行われるようになった。 「わかりやすい例は、パートスタッフのスケジュール管理や業務時間の計算です。これまではスタッフの時間はカレンダーに入力、就労した時間は別フォームに入力、入力された情報を経理がダウンロードして計算すると3つに分かれていましたが、今ではパートスタッフが専用のスマホアプリに入力するだけで社内全体でシフトを共有でき、就労時間の管理まで可能になりました。コロナ禍でテレワークが浸透しても、このシステムが結構役に立ちました」(中原氏)システム導入は社員に一任
~自分たちで作り上げた仕組みが自信に
公社の支援を受けた理由について語る中原氏。
「システムは自分たちだけでも作ることはできましたが、今回は公社のデジタル技術活用推進事業(以下、当事業)の専門家によるハンズオン支援を受けて、助成金を使わせてもらいました。理由は業務が忙しいこともありましたが、第三者の意見を取り入れたいと思ったからです。システムの基本的な設計は私たちで行いましたが、開発は他社にお任せしました」 「プロジェクトは最初に社員全員を集めて、どういったシステムにするか議論を行い、社員の中から担当を決めました。公社から派遣された専門家、システム開発会社との折衝などは、すべてプロジェクトリーダーの役目です。私はプロジェクトには関わらず、様子を見守っていました。プロジェクトリーダーは通常業務の時間を詰めながらだったので大変だったと思いますが、“自分で仕組みを作り上げた”という結果が自信になると思います」(中原氏)プロジェクトにおける公社の役割について、当時を振り返ってもらった。
「私たちも開発を行っているので、自分たちのやり方もあるのですが、公社が紹介してくださった専門家からのアドバイスは、アプローチが違っていて、“なるほど、こういう方法もあるんだ”と勉強になりました。とても親身になってアドバイスしてくれました」(中原氏) 完成したシステムは社員やパートスタッフが利用していくなかで意見を出し合い、さらに使いやすく社内でカスタマイズが重ねられている。 「ちょっとした変更でもすぐに対応できるのはシステム会社としての強みです。自社でシステムを運用してみて、パッケージ化して外販する可能性を探っています。今回開発したシステムの場合、データベース管理システムとWEBサーバを連携させているので、そのままシステム構成を転用できないかもしれませんが、多分他社でもニーズはあると思いますので、今回のアイデアを次のビジネスに繋げられればと思っています」(中原氏)案件の可視化が社員の成長へ!
~社員は利益率を考えながら仕事に取り組む
システム導入後、案件の多くを社員主導で進行できるようになった同社。中原氏一人が窓口だったものが、各社員も窓口となれることで仕事の件数も増え、売り上げも大いに伸ばした。
「コストカットや効率化に加えて、私を中心として行われていた仕事が、いまはフラット化というか、並行して複数の仕事が動かせることが一番大きいです。社員も仕事を待つのでなく、自分から発信していくようになったと思います。導入したシステムでは、案件の予算やコスト管理、社員・パートスタッフの勤務時間や管理内容が可視化されるようになりました。自分自身やパートスタッフがどれだけの時間で仕上げていかなければいけないのか、これまで以上に経費や利益率を考えて、マネジメントを意識しながら仕事に取り組むようになり、会社が肉厚になってきたような感覚があります。社員の成長を促せたことがシステム導入の最大のメリットだと思います」(中原氏)デジタル化には現状を断ち切る覚悟も!
~新たな発想には専門家のアドバイスを
今回、支援を受けて社内システムの整理を行い、自らシステム開発を行う立場にいる中原氏に中小企業がデジタル化する際のアドバイスを伺った。
「私たちの場合、デジタル畑の会社なので取り組みやすかったのですが、アナログな部分をデジタル化するには突破しないといけない壁があると思っています。“アナログで行っている業務を、従来と変わらないようにデジタルに置き換えたい”と相談を受けることがありますが、これではデジタルの利点は出ません。今までのやり方を維持するのではなく、バシッと断ち切った発想に至れないと本当に効果のあるデジタル化は難しいと思います。アナログから脱却したいと悩んでいるのであれば、デジタルに詳しい第三者からのアドバイスは重要なので、中立な立場である公社の専門家のハンズオン支援を利用するのはいいと思います」(中原氏)企業情報
- 社名
- アイサーク株式会社
- 所在地
- 東京都台東区浅草橋5丁目2-3 鈴和ビル5F
- 設立
- 2008年
- 事業内容
- システムの企画・提案、開発・保守業務、自社開発システムの企画・開発・販売業
- 資本金
- 1,000万円
- 従業員数
- 8名(正社員)