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2026.01.09

データの可視化で原価の1%削減を達成!

【中小企業がDXで描く“未来”】#4 株式会社三桂〈製造業〉

サンドイッチの製造と卸を行うかたわら、自社店舗の運営も行う株式会社三桂(以下、同社)は、仕入れ・生産の計画をExcelシートで管理していた。しかし、シートの書式はバラバラで、情報は社内に散在していたため、集計・分析するまでかなりの時間がかかっていた。その結果、対応策を打ち出してもタイミングを逸することが多かったという。そこで同社では、仕入れ・生産を一元管理できるシステムを導入し、経営陣が自社の現状を把握してすぐに対策を打てる体制を整えた。

株式会社三桂代表取締役社長 川﨑 公美 氏
代表取締役社長の川﨑公美氏はサンドイッチを通じ、顧客に安心・おいしさ・幸せを届けようと心がけている

原価率改善のため、現場のデータをリアルタイムで確認したかった

同社は1967年に創業されたサンドイッチ専門企業だ。当初は製造と卸が中心だったが、2006年に「BLOSSOM & BOUQUET(ブロッサム・アンド・ブーケ)」ブランドを創設してからは自社店舗の展開を加速。イートインスペースでサンドイッチやコーヒーなどを楽しめる「BLOSSOM & BOUQUET カフェ」や、デパ地下などにあって利用しやすいテイクアウト専門店「BLOSSOM & BOUQUET ショップ」などの店舗を出店し、人気を呼んでいる。卸部門と自社店舗の売上額はほぼ同程度となっており、これらの2本柱があったことでコロナ禍もうまく乗り切ることができた。

最大の強みは、やはり商品力だ。特に食材にはこだわっており、例えばレタスは、指定工場で作られた無農薬水耕栽培品を中心に使用している。また、食の安全・安心への意識も高く、社内に設置している衛生検査室で徹底した品質管理を行っている。おいしさと安全性の両方を常に追求するのが、同社のポリシーである。

「BLOSSOM & BOUQUET DELI CAFE 品川店」の様子
JR品川駅からほど近い「BLOSSOM & BOUQUET DELI CAFE 品川店」の様子。バラエティ豊かな商品を見ているだけでも楽しい

同社が2025年時点で展開している自社店舗は全15店。基本的に商品は板橋区にある本社工場で製造しているが、4店は厨房を持ち、一部を店内で製造している。

こうした体制下で以前から問題になっていたのが、仕入れ・生産を管理する手法だ。2024年以前は、本社工場や各店舗の担当者がそれぞれ用意したExcelシートや紙の帳簿を使い、食材の仕入れ計画や商品の生産計画を立てていた。このやり方では、川崎氏が各生産現場の現状をつぶさに把握するのが難しかったのである。 「Excelシートの形式はバラバラでしたし、それらを共有する仕組みもありませんでした。そのため、いろいろな部門に散在しているデータを集め、手作業で転記し全社データにまとめるまで2~3週間は必要だったのです。特に困っていたのが、材料費など原価に関するデータがすぐに得られないことでした。 当社ではお客さまに楽しんでいただくため、月に数アイテムの新商品を売り出しています。こうした商品は将来の予測が難しく、時には売り上げ不振や仕入れの見込み違いなどで廃棄が増えるケースもあるのです。また、ここ数年は材料費の値上げが続いていることもあって、原価はふくらむ傾向にありました。 もし、仕入れや生産に関するデータをリアルタイムで得られていたら、原価率が高まった理由をすぐに突き止め、適切な手が打てたと思います。ところが、あの頃の当社にはそうした仕組みがありませんでした。仕方なく、私は『とにかく原価を下げるよう頑張って!』などの漠然とした声かけをするしかなかったのです」 仕入れや生産に関する社内データを、すぐに見られる仕組みがほしい。そう考えた川崎氏は相談先を求め、中小企業庁が提供していた無料の専門家派遣事業「中小企業119」(2024年3月で終了)に申し込んだ。そこで紹介されたのが、公社の「生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業」()である。 「公社さんとのお付き合いはそれまで一度もありませんでしたし、どのような団体なのかも知りませんでしたが、思い切って窓口に出向いたところ、とても親身な雰囲気で応対していただきました。それで安心し、『生産性向上のためのデジタル技術活用推進事業』に申し込んで、2022年4月から月1回程度のペースでアドバイザーの方と面談するようになったのです」  当時の事業名で、現在は「DX推進支援事業」で同様の支援を実施

自社に必要なシステムをじっくり見定めるのがシステム導入成功の鍵

川崎氏とアドバイザーがまず取り組んだのは、自社が抱えている課題の洗い出しだった。

「当時の私には、社内データをリアルタイムで見たいという希望以外にも、たくさんのやりたいことがありました。それで、『工場内に大きなディスプレイを置き、サンドイッチの製造レシピを常に表示させたらどうか』や、『材料の重さを自動的に量れる仕組みを導入できないか』など、いろいろな考えをアドバイザーの先生に投げかけました。 今振り返ると、それらの大半は業務改善につながらないようなアイデアだったと思います。ただ、先生は決して、私の考えを頭から否定するようなことはしませんでした。『そのアイデアが実現すると、どのような利益が得られるでしょうか?』『実現するためにはどの程度のお金がかかるのか考えてみましょう』『利益と費用のバランスは取れているでしょうか?』などと私に問いかけ、自力で考えるよう導いてくれたのです。そのおかげで、改善を進める際にはどのように頭を動かせばいいのか、私は学ぶことができたと思います。また、先生が豊富な経験を生かして、他社や他業界の成功事例を教えてくれたのもありがたかったです」 その結果、洗い出しには1年もの期間を要した。こうして進むべき道がはっきり見えた2023年夏頃から、同社は満を持してシステムの選定に進んだ。アドバイザーと話し合った結果、川崎氏は導入システムの候補を以下の3つに絞り込んだ。
    1. (1)クラウド型プラットフォーム上で仕入れ・生産の入力システムを構築する方法
    2. (2)RPA()で各担当者が使っているExcelシートを自動的にとりまとめる方法
    3. (3)Excelシートのフォーマットを統一し、それらをまとめて運用できる新システムを構築する方法
    4.  Robotic Process Automationの略。パソコンで人が行っている定型的な作業を、ソフトウェアロボットが自動化する技術のこと
川崎氏は、コストや導入のしやすさ、将来性などの観点から3つを比較。(3)で進めることを決め、以前から同社の社内システムに携わっていたシステム会社に開発を依頼した。 「導入に際して最も重視したのは、製造現場に負担をかけないことでした。当社の役割は、1日も欠かさず、おいしいサンドイッチを安定してお客さまに届けること。もし、新しい仕組みを導入して現場のスタッフが大混乱に陥ったら、消費者や小売店など多くの方々にご迷惑をかけてしまいます。そこで、現場が使い慣れているExcelシートをできるだけ生かすやり方を選びました。 私たちはこの段階で、以前から当社の社内システムを手掛けていた開発会社に相談しました。初めてお付き合いする企業に依頼すると、サンドイッチ製造という業態や、私たちが抱えている悩みなどをあまり理解いただけず、結果的に使いづらい仕組みを提案されてしまう危険性があると考えたからでした。そこで、システム会社からの提案内容をアドバイザーの先生にチェックいただき、『提案内容は問題ないし、コストも妥当』というアドバイスをいただいたので、正式に依頼しました」 システムの開発が本格的にスタートしたのは、2023年秋。数カ月の開発期間を経て、2024年夏にシステムが完成した。その結果、川崎氏は仕入れなどのリアルな情報を、すぐに手に入れられるようになったのだ。 「以前は数人の担当者からExcelシートを集め、ヘトヘトになりながら手作業でデータを集計しなければなりませんでした。作業が終わった頃には翌月になって、すでに別の新商品が出ている時期です。そして、せっかく分析したデータをスタッフに展開しても、あまりに時間が経ちすぎてその数字が何を意味しているのか分からず、無駄に終わるのが常でした。ところが今は、ボタンを1つクリックするだけで、いろいろな情報が一発で表示されるのです。『そう!この仕組みがほしかった!』と、思わず声を出してしまうほどでした」

リアルタイムに近いデータを集める川崎氏
リアルタイムに近いデータを、早く集めることが正しい経営判断につながるというのが、川崎氏の実感だ
ある食材の状況を、新システム上で表示している画面
ある食材の状況を、新システム上で表示している画面。システム導入により、各食材の仕入れ・在庫の状況を一目で確認できるようになった

データが可視化されたことで「攻めた新商品」の開発も可能に!

システム導入の最大の利点は、食材の仕入れ・在庫・消費といった状況がすぐさま見られることだ。その結果、仕入れや在庫が多すぎる食材がどれか分かり、適切な対処ができるようになった。また、製造現場のスタッフがこうしたデータを見ることで、食材を「どんぶり勘定」ではなく適切に管理しようとする意識が高まった。その結果、システム導入前は47%だった年間の原価率が、46%に減少したという。

「原価率が1%減った結果、1年間の利益は約400万円増えました。一方、システムの開発費用は百数十万円で、さらに公社の助成金も活用しております。これだけでも、システムを導入した意味があったと思います。 データをきちんと取れるようになったことで、商品の開発・改善にもプラスの効果が出ています。その1つが、挑戦的な新商品の開発ができるようになったことです。以前は新商品を開発する時、担当者が勘を働かせて販売数を予想し、仕入れる食材の量を決めていました。期待より売れなければ食材の廃棄が増えますから、多くの食材を少量ずつ組み合わせたり、高級食材をふんだんに使ったりすることには及び腰になりがちだったのです。しかし、参考にできるデータが蓄積された今は『この種の新商品ならこのくらいの食材が必要で、このくらいの販売数が期待できそうだ』とかなり正確に予測できるようになり、自信を持って複雑で斬新なレシピを生み出せています」

導入したシステムのデータを見る製造現場のスタッフ
データの収集・分析が簡単になったことは、新商品の開発や従来からあるレシピの修正にも役立っている

今回のシステム導入の経験から、デジタル化を進める際に、リーダーは2つの点に注意すべきだというのが川崎氏の意見。

「1つ目は、人の意見を素直に聞き取ることです。アドバイザーからの助言もそうですが、特に大切なのは現場の声でしょう。新しいやり方がスタッフの負担にならないよう、細心の注意を払うべきです。 もう1つ注意すべきなのは、解決すべき課題に優先順位をつけることです。小さな投資で大きな効果が得られるものを見定め、重要なものから進めるのが経営者の役割だと思います。 私たちはアドバイザーの先生と面談を重ねる中で、自社が抱える課題に優先順位をつけることができました。他の中小企業でもこの事業を使い、時間をかけながらデジタル化に取り組んでいただければと思っています」

三桂がDXで描きたい未来

~配送データの見える化に取り組みさらなる生産性向上へ~


株式会社三桂 代表取締役社長 川﨑 公美 氏

「当社は、本社工場で生産した商品を自社トラックで配送しています。時期や曜日によって商品の出荷数は変わりますし、前日に『特別注文』が入るケースも少なくありません。そこで、荷物を各トラックにどう積み込み、どんなルートを進めば最適なのか調整するため、配送データの見える化に取り組みたいと思っています。

このとき、公社に支えられながらシステムを導入した経験が生きると期待しています。私たちはアドバイザーの先生からたくさんの教えをいただきましたし、同時に、自分たちでも知恵を絞りながらデジタル化を進めました。そこで得た学びが、配送ルート最適化の分野でも役立つのではないでしょうか」

三桂がDXで描きたい未来
~配送データの見える化に取り組み
さらなる生産性向上へ~



株式会社三桂 代表取締役社長 川﨑 公美 氏

「当社は、本社工場で生産した商品を自社トラックで配送しています。時期や曜日によって商品の出荷数は変わりますし、前日に『特別注文』が入るケースも少なくありません。そこで、荷物を各トラックにどう積み込み、どんなルートを進めば最適なのか調整するため、配送データの見える化に取り組みたいと思っています。

このとき、公社に支えられながらシステムを導入した経験が生きると期待しています。私たちはアドバイザーの先生からたくさんの教えをいただきましたし、同時に、自分たちでも知恵を絞りながらデジタル化を進めました。そこで得た学びが、配送ルート最適化の分野でも役立つのではないでしょうか」

企業情報

社名
株式会社三桂
所在地
東京都板橋区大山東町17-12
設立
1967年
事業内容
サンドイッチの製造、卸、自社店舗での販売
資本金
1億円
従業員数
200名(2025年11月現在)