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2022.03.24

ICTツール導入により、
生産状況を見える化できた現場で
生産性向上へと大きく進んだだけでなく、
従業員一人ひとりの仕事への意識が変わった。

株式会社タック印刷

タック印刷は、工業製品に貼るラベルや銘鈑などを専門に印刷する業者として、長年国内を中心に家電製品やIT機器等の工業製品メーカーへと、個別注文品を納入している。高い印刷技術を持ち、国内外の様々な賞を受賞している。さらに、UL、CSA規格の認証を取得するなどして、年々、取引企業の数、受注量が増えてきている。その状況の中、タック印刷は、経理業務についてツールを活用して業務の効率化を進めていた範囲を営業の作業や製造現場に拡大し、生産性向上を目指すことを決めた。従業員を中心において、段階的、計画的にICTツールを導入することで、従業員がICTツールへの理解を深め、導入してすぐに活用し、生産性向上の成果を生んでいる。さらに、従業員一人ひとりの業務の状況を見える化し、共有化されることで、上司と従業員、従業員同士や経営者と従業員のコミュニケーション機会が増え、従業員の業務への意識にも変化が現れてきている。

株式会社タック印刷代表取締役 高田朋幸氏にお話を伺った。

タック印刷

課題の整理

タック印刷は、長年、数社の主要な企業との取引を中心に、バブル崩壊、リーマンショックや東日本大震災等の苦難を乗り越えて事業を進めてきている。しかし、長年の経済環境の変化の中で製造業のモノづくりの構造が変わったことによって、タック印刷の営業形態が、主要な顧客数社を中心とした取引から、多数の顧客と取引を行う形態に移行することになってきた。このことで、細かな受注件数が増え、受注から出荷までの様々な段階での事務処理業務が増える結果となった。その事により、以下のような様々な課題が顕在化してきた。


・作業者の個人レベルでの負荷を把握したい
  営業が新規受注の際の納期回答のために現場の負荷を知りたい
・案件ごとの進捗状況を把握したい
  本社工場と向島工場での稼働状況を把握したい
  顧客からの納期照会に円滑に回答するために、受注案件を誰がやっているのか、
  いつやるのか、やったのかを簡単に確認したい
・現在の日報では詳細を把握できない
・リアルタイムでの生産状況を把握できない
・日報作成に時間が掛かっている
  その日の作業の完了後に日報をまとめている
・検査担当者が検査工程を組めない
  印刷が完了してから検査工程に情報が入るので、事前の計画が難しい
・印刷機械の稼働率を把握したい
  印刷機械に依存する案件の引き合いに迅速に対応したい

現場での意見を

日々の従業員の活動を中心においてICTツールを活用することを大切に考え、現場での日々の作業を見てみた。
受注した案件を営業起点で製造工程を組むことがタック印刷での仕事の流れとなる。営業担当が受注案件を受注(販売)管理システムに入力する。この際に、在庫の有無を確認し、製造する数量を決めて、工場と製造するフロアを指定し、現場に生産指示を行う。現場では、工場の各フロアーに割り振られた生産指示の製品仕様と納期に合わせて、作業の順番を決めて、従業員に振り分けることで、日々の生産を進めていた。各作業の進捗は毎日作業終了後に手書きの日報が作られて、本社に日報が集まり、確認ができることになる。各現場が関連する作業の進捗を確認できるのは翌日となる。納期に影響する、作業の最終工程となる検査工程では、どの製品の検査がどのタイミングで入ってくるかを正確に掴むことはできなかった。営業では、顧客からの新規案件への納期回答や受注案件への納期確認のためには、工場長や現場責任者に都度確認を行わなければならなかった。
このように営業、製造、検査の現場では、ひとつひとつは複雑な作業ではないにも関わらず、働く従業員にとっては、ストレスに感じることになっていた。
新たな顧客からの新規案件が増えるなかでは、従業員は少しでも煩わしさを軽減することが必要であるとの結論となった。

やるべきこととやらないこと

システム導入が従業員にとって新たな負荷となることを避けるために、実現する機能は最低限にし、操作もみたものをみたままで扱えるようにと考え、シンプル・ストレスフリーを大切に、導入するシステムを従業員の使い勝手を最優先に考えた。その一方で、従業員に機器や操作に馴染んでもらうことが重要であると考えて、出退勤をシステムにて行うこととした。

・生産状況の見える化
  みたい現場の状況をリアルタイムで見ることができる
・個人毎の業務案件の割り付けと完了
  登録されている作業を画面上でドラッグアンドドロップすることで簡単に
  割り付けられる。
  作業完了の入力を簡易にする。
・日報作成

ITベンダー

印刷業を理解したITベンダーによる特注品を導入する事に決める。コミュニケーションを十分にとることができ、発注側の意図を十分に理解したITベンダーが、新しい取り組みに挑戦し、システムを構築した。既存システムとの連携も問題なく進めることができた。

導入したシステム・ツール

従業員の誰からも個別の案件の生産の進捗状況を把握できる生産状況の見える化の実現のために、「大型ディスプレイ」、「タブレット端末」と「生産管理ツール」から構成されるシステムを導入した。

システムの構成

<大型ディスプレイ>
社長、営業、営業スタッフの常駐する本社事務所に、大型ディスプレイを設置した。
大型ディスプレイでは、Webブラウザー上で動く生産管理ツールにより、本社、向島両工場の各フロアでのリアルタイムでの作業の状況や1週間の作業予定を確認することができる。

本社事務所に設置された大型ディスプレイ
本社事務所に設置された大型ディスプレイ

<タブレット端末>

本社工場、向島工場の各作業場にタブレット端末を導入した。作業現場でPCを使うことは適切ではないと判断し、より操作性の良いタブレット端末を用いることとした。

タブレット端末では、Webブラウザー上で動作する生産管理ツールに登録されている案件の作業を、各作業場で従業員に振り分ける。従業員は日単位、週単位で割り振られた作業内容を確認することができ、割り振られた順に作業を進めればよい。従業員は割り振られた作業の終了時にタブレット端末から終了入力を行う。完了入力後には、自動的に次に割り振られた作業が開始となる。

従業員の出退勤などの勤怠システムへの入力端末にもなっていて、出勤を入力することで、自動的にその日の最初の作業が開始となる。退勤時も退勤を入力することで、自動的に翌日に繰越す作業を処理する。

現場に設置されたタブレット端末
現場に設置されたタブレット端末

<生産管理ツール>

Webブラウザー上で動く生産管理ツールを導入した。既存の受注管理システムと連携することを条件に設計された。営業は、受注した案件を従来からの作業手順で既存の受注管理システムに登録する。この登録されたデータは、受注案件のデータとして、生産管理ツールに連携される。この段階で受注案件は、案件の仕様に合わせて、作業工程に分解された作業パッケージとして、本社・向島工場の指定作業場に割り当てられる。指定された作業上では、作業責任者が従業員に割り付ける。感覚的な操作が可能な画面構成とユーザーインターフェースで、従業員が自然に活用できるツールとした。

導入の流れでのポイント

東京都中小企業振興公社IoT/AI導入支援事業の導入前適正化診断を活用でき、必要なタイミングで、適宜助成金の活用を考えながら、段階的なシステム導入を図った。現場の声を重視し、必要以上の機能を入れることをせず、従業員の業務のデジタル化に対するハードルを下げることができた。

できたこと

・受注案件の進捗状況
  各工程の見える化
  進捗状況がリアルタイムで誰でもが見えるようになった
・検査作業の工程組み
  次にどの製品が検査工程に届くのかが見えるようになった
・作業の振り分け
  作業現場で、受注案件を各作業者に振り分けることが容易になった
  納期に合わせた作業日程を組み立てることが容易になった
  納期前倒し変更への対応が容易になった
・受注入力から工程管理までが連動して動く
・案件・作業の優先順位付けが容易になった

有形効果・直接的効果

・受注案件の生産状況の見える化により、受注案件の顧客からの納期照会への
 回答が容易になった

・新しい案件での顧客との納期調整が容易になった

・従業員の熟練度に合わせた作業の振り分けが容易になった

・検査作業において、事前の準備や作業の段取り変えができるようになった

無形効果・間接的効果

・従業員が違和感なく、新しいシステムを受け入れていて、更なるデジタル化の
 ハードルが低くなった。

・日報をまとめるために工場長が行っていた終業後の作業がなくなった。

・他の従業員の業務や日毎の成果を全ての従業員が見ることができるようになり、
 日々、従業員が互いに同僚や部下の取り扱う案件数や印刷枚数を具合的な数字の
 積み重ねとして見ることができることで、自分自身の日々の成果がやりがいや自信に
 つながるだけでなく、上司、同僚などの周囲から評価を受けることや互いの成果を
 認め合う職場雰囲気が出来上がった。

・少し難しい案件や経験の少ない案件を従業員のスキル育成のために、敢えて振り分ける
 ことが容易になり、計画的な人材育成をOJTで実践できるようになった。

・従業員の側から業務のデジタル化の提案が上がってくるようになった。

今後公社にのぞむこと

タイミングよく適宜フォローをしながら、必要な情報を提供いただくことで、さらなる業務のデジタル化、DXへの取り組みが容易になると考える。

今後も継続的にデジタル化に取り組んでいくことと思います。さまざまな情報をいただき、勉強しながら進めていきたいと思っている。

次に考えていること

営業受注入力支援システムと現場作業進捗を見える化するシステムの導入を終えて、次に、営業活動支援ツール、顧客連携(CRM)による潜在顧客の掘り起こし作業を容易にする仕組みを取り入れること、

顧客からの発注形態の変化に合わせて、中長期の発注計画の情報をもとにした中長期受注生産計画を見える化し、生産負荷の平準化を図ることを考えている。

インタビュイー

interviewee

株式会社タック印刷

代表取締役 高田 朋幸

企業情報

社名
株式会社タック印刷
所在地
東京都墨田区業平1-9-7
設立
1965年
事業内容
ULラベル・レーザーマーキングラベル、工業製品向けラベル製造
資本金
888万円
従業員数
21名