2019.02.19
航空・宇宙品質で独自の分野を開拓する「由紀精密」
AIとクラウドを活用しRPA*を導入!
株式会社由紀精密〈製造業〉
株式会社由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市)は、精密な切削加工一筋に58年。様々な製品の開発製造に取り組んできた老舗企業だ。現在は航空・宇宙・医療・電気電子・機械式時計など、自ら「研究開発型」町工場と称し、研究開発が求められる新たな分野にも積極的に参入している。そんな環境変化の中、特にトレーサビリティが問われる航空・宇宙や医療機器分野からのニーズをきっかけに、同社は、Alとクラウドの技術を活用した、RPA*を導入した。システム導入のきっかけと、今後の課題を株式会社由紀精密の取締役事業推進部長 笠原真樹氏に聞いた
- RPA*「ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)」意味は「ロボットによる業務自動化。ブラウザに表示した内容を見ながら、一定のルールに基づきデータ入力するなどのいわば「人間がやってきた作業」をロボットに覚えさせ自動で遂行する仕組み。
複合機をAIとクラウドで強化し、効率的な電子化を実現。手書きの情報管理も可能に!
同社が導入したRPAは、リコーの「クラウドOCR」といわれる仕組みをカスタマイズした製品。複合機とAlとクラウドの技術を活用する事で、手書きのドキュメントでも効率的に電子化できる製品だ。従来からデータベ一スに格納していたテキストデータはもちろん、図面に入った手書きメモなどの不定形のデータも扱える仕様になっている。
笠原取締役:「RPA導入前は検査データや、イレギュラーなメモが発生すると紙ベ一スで残すしかありませんでした。当初はスキャンデータで解決しようとしましたが、実際にはどうやって紐付けるかが難しかったのです。製品の導入後では、スキャナから読み込んだスキャンデータをいつのデータかをAlで紐付けられる仕組みになっています。」
当社の強みは「高品質」。言わば「研究開発型」町エ場
笠原取締役:「当社は、創業当初から公衆電話や電気電子関連などの部品を受注していました。当社の強みは高品質な製品を安定して生産できることであると自負しています。近年は、マーケットの変化に応じて小ロット精密部品の設備も揃え、航空、宇宙、医療分野にも進出を試みています。ここ5年ほどで飛行機のエンジン部品も受注できるようになりました。2008年には開発部を立ち上げJAXAと推進機器の研究開発に取り組み、人工衛星を製造するベンチャー企業と衛星のミッション機器の開発にも取り組んでいます。当社のコア技術は部品加工ですが、更に設計の上流に踏み込んでいきたいですね。」
オーダーIDで全てを紐付け、トレーサビリティを確保。
航空・宇宙や医療業界参入にあたりJIS Q 9100を取得、より詳細なトレーサビリティの確保が必要になった。今回のRPA導入より以前もトレーサビリティに関しては、1S09001でも定められているため仕組みは整えていた。しかし人の手による作業が発生する工程も多かったため今回のRPA導入に至った。オーダーIDで全てが紐付けられ、データベ一スをロボットによって一元管理できる仕組みを整えつつある。例えば、加工から出荷までの各工程で製造者・設備・材料調達を紐付け追跡可能にできている。lT活用は目的とは捉えておらず社内改善の手段として考えているため、目的に合わせ必要なところに少しづつ導入を進めていく予定。
4つの拠点を繋ぐIT基盤「窓システム」の導入
RPA導入の仕組み以外に、同社はIT基盤として拠点を繋ぐ仕組みにも取り組んでいる。同社は、少し前まで拠点が一つだったが、2014年以降は4つ(新茅ヶ崎本社エ場・第2工場・東京拠点・新横浜)の拠点に分散している。そこで会社全体のコミュニケーションを改善しようと、各拠点をWEBカメラや専用の社内SNSで繋いだ独自の「窓」というシステムを構築している。常にお互いが見えるようにし、あたかもそこに人が居るかのようにコミュニケーションができる仕組みを目指しているという。例えば、出来上がった製品をお互いに見せ合ったり、帰宅時に手を振ったり、と日常的に活用されている。
「研究開発型」町工場としてのIT基盤を構築。
「先ずは自社のIT基盤をきっちり作り上げる必要がある」と笠原取締役はいう。同社にとって優先順位が高い「RPA導入」や拠点を繋ぐ「窓システム」の導入など、社内IT基盤の導入に取り組んでいる。同社では既にセンサ一を使ってクラウドに飛ばすような、いわゆるloTも一部の部署では必要に応じて導入している。
interviewee
株式会社由紀精密〈製造業〉
取締役 事業推進部長 笠原 真樹 氏
企業情報
- 社名
- 株式会社由紀精密〈製造業〉
- 所在地
- 神奈川県茅ヶ崎市円蔵370
- 設立
- 1961年7月
- 事業内容
- 航空・宇宙、医療機器、電気・電子機器関連部品の試作・量産
- 資本金
- 3,500万円
- 従業員数
- 39名