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2023.09.28

自社システムを開放して新たなビジネスチャンスを創出!

社会保険労務士法人 アジア経営革新等支援機関「専門・技術サービス業」

アジア経営革新等支援機関(以下、同社)は、社労士事務所として顧客である企業に代わって労働保険や社会保険の手続きを代行し、労務から財務問題まで、顧客に最適なソリューションを提供。業務のなかでも就労外国人の厚生年金保険の脱退一時金請求や所得税還付などを数多く取り扱っている。日本に働きに来た外国人は、厚生年金保険に加入が義務付けられるケースが多いが、年金の受給権が発生する10年経過する前に帰国する人が大半となっている。そのため脱退一時金制度があるが、その一時金の申請代行および、源泉徴収された退職所得の選択課税を還付すべく確定申告の申請代行を行っている。

確定申告書をはじめ行政では多くの申請書が電子申請可能となり、これまで手入力していた作業を自動化すべく、同社代表・工藤裕徳氏は、東京都中小企業振興公社(以下、公社)の支援を得て、所得税還付業務のシステム化、電子申請業務におけるパソコン作業を自動化するRPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して業務効率化を行った。

「国税庁の確定申告書を作成するアプリがありますが、入力項目もページ数も多く、入力内容がないにしても“0”と入力しないと進みません。慣れていない人だと20~30分かかってしまう手続きがシステム活用することにより5分ぐらいでできるようになります」(工藤氏)

アジア経営革新等支援機関 代表 工藤裕徳氏

はじめてのシステム導入~数字の読み取りができない!?

これまで同社では顧客管理などをエクセルで行ってきた。顧客数も多くなり管理が難しくなったと感じていた工藤氏は、中小企業大学校で出会った公社職員からデジタル技術活用推進事業(以下、当事業)のパンフレットを渡され「年金事業でのデジタル化は必要だ、一時的に費用が掛かっても人を増やすよりかはシステム導入して効率化できるものは全部やろう!」と支援を受けることを決めた。

導入するシステムは、厚生年金保険の脱退一時金の支給決定通知をスキャナーで読み取り、基礎年金番号や金額のデータを取得して申告書まで作成を行うもの。送られてくる支給決定通知書は100〜200枚近くあり、この手入力作業を、この機会に効率化しようとした。 システム会社に依頼しシステム構築を進めたが、いきなり壁にぶつかってしまう。 「手書きでも認識率97.8%と謳われていたのに、基礎年金番号の読み取りが出来ないのです! これでは仕事にならないのでシステム会社と何度も打合せをしましたが、結局解決には至らず仕方なく別のシステム会社に依頼することにしました。原因は政府や行政機関が作る印刷物に使われる数字の書体が特殊だったようで、文字の読み取りを学習させて認識率を上げることによりシステムが安定し今ではほぼ100%読み取れます。この経験でシステム会社に依頼する際のコミュニケーションの大切さと難しさに気づかされました」(工藤氏) 現在は国籍や生年月日といった基本情報を提携先に入力してもらい、同社では支給決定通知書をスキャニングしてボタン1つ押せば入力してもらった基本情報を反映させた申告書が自動で作成できるようになりました。 「これまで、日本に在住して働く外国人のサポートを行う会社と同じ場所に事務所を構えて業務を行っていましたが、こちらのシステムを開放することでデータを共有できるようになり、業務の無駄がなくなりました。自社のシステムを外部に開放することで、新たなビジネスチャンスも拡がっています。システムを開放して入力を全部先方に行ってもらえば、こちらは各書類作成をボタン一つで終わらせられ、時間も短縮できてその分手数料も安くできます。今、技能実習生や特定技能など外国人を監理する団体と提携する話を進めています」(工藤氏)

基本情報を提携先に入力してもらいデータを共有。
税務署から郵送された厚生年金保険の脱退一時金の支給決定通知をスキャニングすれば、ボタン一つで紐付けができ、確定申告書のデータ作成が完了する(画面イメージ)

要件定義のポイント~システム会社との交渉は“徹底して文章化”

この時のシステム導入のやりとりからコミュニケーションの大切さがわかった、と工藤氏は語る。

「この時、僕はシステムについては素人で、導入するのも初めてのこと。こちらから必要な機能や要望をまとめた要件定義は100点とはいえません。最初のシステムエンジニアの方は、それを元にスタートしたので、こちらの要望とは違うものが出てきたり、何度もやり直したりと納期が遅れていくわけです。システム会社は自らOKと言ってしまったメンツもあるし、お金のこともあるので、“できない”とは言えません。何が“できる”のか、お互い同じ単語を発していても通じていませんでした」(工藤氏) その後、システム会社との打ち合わせでは、自ら画面構成のようなものを描いて、この位置にボタンがあって、こういう操作ができるようにしたいと、徹底的に文章に起こして伝えるようになった。 またシステム会社と交渉するなかで、当事業のアドバイザーは心強かったと工藤氏は当時を振り返る。アドバイザーから裏付けを得られたことで、システム会社に対して自信を持って交渉に取り組めたとのこと。

効率化で空いた時間は、新たな仕事の創出、さらなる新しい効率化のアイデアを考えることに使えるようになった

業務時間を30時間/月短縮~時間が空いた分を新たな仕事に注力

システム導入してから以前に比べ30時間/月ほどの業務時間の短縮になり、「時間が空いたというよりは、仕事を増やせた」と語る工藤氏。同社では空いた時間を有効利用して、2023年3月に行政書士事務所を開業。新たな仕事でのシステムのアイデアも浮かんでいるとのこと。

「在留資格申請(ビザ申請)のオンラインによる電子申請を効率化できるシステム導入を検討しています。在留資格は職種や技能など多岐に渡り、在留資格申請のために40種類近い書類を添付しなければいけません。それを一つ一つアップロードするのは時間がかかりますから、RPAを活用して、書類を1カ所に保存して自動でアップロードできるようにしたい」(工藤氏) このほかにも年金の脱退一時金支給申請書と委任状を印刷して郵送していたものを電子申請できるようにするアイデアがあるそうで、いろいろなサービスが電子化されることで業務を効率化ができる部分が増え、やりたいことがたくさん増えたと工藤氏は語る。 最後にシステム導入のポイント、デジタル化を検討している中小企業へのアドバイスを伺った。 「それまで業務の流れをあまり意識していませんでしたが、システムの構築を依頼して、業務の流れでどこをどうやれば一番省力化できるか改めて考えるようになりました。システムエンジニアに要件定義を伝えるのは、新人に仕事を教えるのと同じで、結局自分の中で整理できてないと説明できません。“頭の中で咀嚼して言語化すること”がポイントです」 「行政のホームページは画面構成が変わりボタンの位置がズレることが多く、RPAがうまく動作しなくなることがあります。最初に依頼したシステム会社の料金は安かったのですが、RPAの調整をお願いすると即時に対応してもらえなかったり、都度有料になることもありました。我々の会社のためだけに、修正しなければいけないので理解もできます。でも他社に頼んだところ、他社も共通のシステムと我々以外のシステムも変更を行うので、毎月、保守料は支払っていますが、修正作業は追加料金もなく迅速に対応してくれます。システム会社を選ぶ際は、料金の安さだけではなく、導入後のトラブル対応なども考えた方がいいと思います」(工藤氏)

企業情報

社名
社会保険労務士法人
アジア経営革新等支援機関
所在地
東京都新宿区西新宿7丁目17-7 廣田ビル402号
設立
2018年
事業内容
入退社に伴う労働・社会保険の手続き代行、労務相談から助成金の活用などのソリューションを提供
また在留資格申請に特化した行政書士業務も行っている
資本金
10万円
従業員数
3名

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