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2018.06.29

生産設備から
IoT活用の生産管理システムまで手作り
飽くなき改善で、システム外販へ

武州工業株式会社

武州工業はパイプ加工のスペシャリストとしてモノづくりの可能性を広げ、夢とビジネスを世界に発信し300年企業を目指している。同社は今年で66周年を迎え、この歴史の中で、優良申告法人として7回におよぶ表彰(税務署から申告と納税が適正であると表敬)を受けている。創業時より自動車用の熱交換器パイプ、および板金部を製造。大量生産から多品種少量生産へと変革する中、時代に合わせた生産設備の設計から生産企画を行ない、さまざまな品物に対応している。2017年には「第7回日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を受賞し多摩地区のハッカソンとして「武州庵」を開設した。常に技術・品質向上とIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など新たな分野でチャレンジしている。

IoT導入の素地
~多品種小ロットに応える生産設備までも自社開発~

武州工業は日本国内でLCC(ローコストカントリー)価格を実現し、海外で生産しなくてもコストメリットが生かせる仕組みを構築している。同社のモノづくりの理念は自社で設備を開発すること、一人の職人が多くの工程作業を行うため(多能工)に人に任せ、人を信用することで自発的な計画と高い品質を保証できる。理念を実証することで「生産性を飛躍的に上げる一個流し生産」、「企画から量産、検査まで一貫対応」、「徹底した生産管理体質」の3つの強みを発揮している。
同社は1987年から多品種小ロットに応えるため一個流し生産を開始し、一人の職人が材料調達・加工・納期管理まで一貫して行い、高品質で効率的な生産を実現している。林社長は「今では一月当たり900種類90万個の生産を行っている。自動車産業やエレクトロニクス産業が、ライン生産からセル生産方式に移行し始めた頃から構築した」という。工程内の仕掛品・移動を最小限に抑えるためのレイアウトを作り、立ち作業でいくつもの加工設備を操作する。一人の職人だけのミニ設備といえる。自社で加工設備や治具などを設計・開発。必要な機能だけを備える個体で市販汎用品と比べて小型化になり省スペース化が図れ、さらに約50%以下の省エネルギー化にも貢献している。製品リードタイムが短縮し、生産性が向上。工程内検査のインライン化で品質の担保が可能となり、生産コストの低減につながっている。

同社では多品種小ロットに応えるべく、多能工による一個流し生産を行い生産性向上を図る

廉価になった市販携帯端末を徹底活用、IoTシステムも自社開発
地道なリアルタイムデータ収集で飛躍的な改善

1996年から作業工程の管理をデータ化。2010年よりタブレット端末を活用、現在170台となっている。出退勤から生産指示、生産実績、倉庫在庫、工程不良、品質を管理し、状況を分析して、材料や在庫の極小化、迅速で短期間の納品体制を展開し生産管理のデータ化が加速した。林社長は「タブレット端末を使用することは、ネット時計で全員が共通した時間でログが収集できる(タイムスタンプ)」とメリットを述べ「中小企業がIoTを導入しやすい環境にあり、コンテンツもそろっている」と話す。
2016年には、IoT(モノのインターネット)に対応し、受発注や在庫管理のほか、市販の電子機器などを使って工作機械の動作情報などを収集する統合情報管理システムを自社開発。受発注など一般的な生産管理システムの機能に加え、機械の稼働状況を把握する機能を搭載した。生産実績や進捗率などをリアルタイムで計測することで、一日の生産量を平準化。生産実績情報から工程不良率や不良内訳の分析もできる。機械のデータ計測には、米アップル社の携帯型デジタル音楽機器「iPod touch」の歩数計機能を使うことで、安価にIoTシステムが構築可能だ。同社ではこのシステムにより、機械の稼働率を計測しデータを収集する。見える化を図った事で、どのような理由でどれだけの時間で機械が停止しているのかを分析し、作業効率を改善。同じ時間の作業で生産性を約20%向上させた。

製造機器にiPod touchを付けることで稼働状況の把握も容易となった

ついには生産管理システム外販、AIの活用も視野に

林社長は「情報のデータ化はリアルタイムで行う方が大切だ。自社にあったIoTの仕組み作りにつながる。多くのデータ(ビッグデータ)から良質なデータを拾うことは難しいことではなく、AIを活用すれば良い」と語る。
武州工業では2018年5月から、このシステムを「生産性見え太くん」として外部に提供している。
同社は2017年、モノづくりに励んだり新しいアイデアを生むオープンな場所として、多摩地区におけるハッカソン(ハックとマラソンの混成語で、IT用語)として「デジタル・イノベーション・ハブ 武州庵」を開設した。加工設備をそろえた工作エリアやレコードプレーヤーやギターがある娯楽室、会議室などを備える。同社では、開設の趣旨として、遊びの要素も含めることで創造性も高め、玩具や遊具、インテリア、介護機器等の新たな分野への展開も見据えている。

外販予定の「生産性見え太くん」。停止理由の入力もタッチで即入力が可能

インタビュイー

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武州工業株式会社

代表取締役 林 英夫 氏

企業情報

社名
武州工業株式会社
所在地
東京都青梅市末広町1-2-3
設立
1951年
事業内容
自動車用金属パイプ部品加工、医療機器部品製作、自動制御機械製作、PIPEGRAM(パイプグラム、パイプを結合した知育玩具)製作
資本金
4,000万円
従業員数
157名