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2019.02.27

多品種小ロットに対応する研究開発型のめっき加工企業。
業務効率化のため、クラウド型の生産管理システムを新規導入

株式会社ヒキフネ〈製造業〉

めっき処理を施された美しい外観や、いつまでも錆びない機能性は、商品の価値を高める重要な要素だ。近年、あらゆる工業製品の表面処理として「めっき」の重要度は、昔とは比較にならないほど高まっているという。今後とも、めっき産業は、更に複雑化、高度化する傾向にある。そんな中、葛飾区に拠点を持つ株式会社ヒキフネは、めっき業界内では稀な、研究開発部門を持つ企業で、材料調達、試作から量産までをワンストップで受注できるという。同社は1932年に創業し、装飾めっきを中心に発展してきたが、近年は独自開発のメッキ処理方法を応用し、電子機器、通信機器、精密電子部品などの微細めっきにも挑戦している。お客様からの、多品種小ロット・短納期に対応するため、クラウド型の生産管理システムを、昨年に新規導入した。株式会社ヒキフネの取り組みを取材した。

装飾めっきから機能めっきへ、伝統と最先端のめっき技術を融合

ヒキフネは、めっき業一筋の地元企業だ。ヒキフネの歴史は、工芸品など装飾めっきから始まった。一方、同社の技術開発の歴史として機能めっきがある。デジタル家電や航空・宇宙、医療機器分野等、あらゆる分野に及ぶ。同社は、昭和50年ごろから研究開発部門を創設。めっき全般の研究開発で培われたノウハウにより、お客様の商品開発をサポートしている。総務部取締役部長 鈴木昌史氏(以下、鈴木氏)に聞いた

研究開発部門を持つ事の意味は大きい

鈴木氏:「確かに研究開発部門は、将来への投資ですから多額の経費が掛かります。しかし、将来のマーケットを模索する為には必要な経費だと考えています。研究開発部門は、次のニーズは何なのかを追求し、今後もめっき分野に特化した研究開発を続けていきます。」

企業として大きな転換期

同社は、昭和47年に墨田区の曳舟から設備を移転してきた。生産設備は既に40年以上経過し、老朽化も進んでいるという。今回の新たな生産管理システム導入を機に、現在の工場をリニューアルするため、既に工場の隣に200坪の用地を準備している。同社は元々、金属めっきが主流だ。複写機関連の樹脂めっきも一部手がけているが、今後は研究開発部門と連携しながら、将来成長性のある分野を模索していく。実は同社は、2018年に経産省の地域未来牽引企業に指定され、融資・税制などの支援スキームが得られることになった。これを活用しようとしたのが、新システム導入のきっかけでもあるという。実際のシステム導入は、総務部の山崎英之氏が取り組んだ。システム導入の経緯を山崎氏に聞いた。

■総務部の山崎英之氏(左)、社屋(右)

旧来のオフコンから、クラウド型の最新システムに変換

山崎氏:「当社は、多品種少量生産が中心です。従来、生産管理は30年ほど前に導入したオフコンと呼ばれるオフィスコンピュータに頼っていましたが、2年前から最新のクラウド型生産管理システムに入れ替えました。導入時には、多品種少量生産の生産管理がしやすいよう様々な機能を追加。例えばIoTデバイスやタブレットを利用し、誰でも簡単に入力できる様に工夫をしています。オフコンでは納期や仕様など、記録できる情報が限られ、過去の受注製品を再度製作する場合、数ヶ月前なら可能でしたが、何年も前だと対応できませんでした。今後は生産アイテムも加速度的に増えていくでしょう。当社にとっても大きな転換点という強い認識もあり、お客様情報や、製品情報、単価、様々な情報を統合して管理できる今回のシステム導入は、必然だったのかもしれません。」「システムの導入により、お客様の履歴管理も容易になりました。例えば、この加工が重要とか、この部分は充分な研磨が必要とか、同様の失敗を2度と繰り返さないための情報が蓄積できる事が一番大きいですね。お客様情報や、生産関連情報等、データは際限なく増えます。従来のオフコンではとても対応できませんでしたね。」

■工場内

導入に当たっての問題点は

システムの変更は、なにかと困難がつきまとうが、同社では、従業員の「導入すれば、より便利になるんだ」という確信がモチベーションに繋がっている。導入に当たり、当初ベテラン従業員から二の足を踏む意見もあった。しかし、同社では1年以上前から、全部門の関係者が新システム導入に関するミーティングを毎週開催し、使い方の勉強会も積極的に行った。「実際、かなりの時間をかけましたね」と山崎氏は当時を回顧する。本当に、自分たちが使いたいシステムにしようと、全従業員が必死だったという。

ボトムアップが基本

同社は従業員数130名の会社だ。従業員は月一回の全員集会で会社の状況を共有している。風通しが良い。今回の生産管理システム導入は同社にとって大きなシステム変更だが、基本トップダウンではなく、経理、営業、現場の全員の意見を集約しながら、自分たちで決めていった。

利益率の改善、経営の見える化に繋がる

同社が顧問コンサルティング会社と、ここ数ヶ月取り組んでいるのが経営の見える化による利益率の改善だ。蓄積した生産管理データを使って、顧客別の利益率を集計。その結果から、客先に理詰めで値上げ交渉を持ちかけ、収益の改善に繋げているという。鈴木氏は、「確かに経営の見える化で、利益が改善している。そんな実感はありますね。これが長期的に見ると一番の収穫かも知れません。」という。実際、同社では受注番号に対する売りと仕入れが明確になり、社内の効率化も分かる等、利益率の見える化が、真の経営改革に繋がっている様だ。

研究開発型めっき専門企業を目指す

従来、金、銀、銅が主流だっためっき業界で、同社は独自開発のブルーめっきに取り組んでいる。ブルーの発色は真空蒸着では既に実現されているが、同社のブルーめっきは、独特の発色が特徴で、真空蒸着に比べると製造コストも安価だ。同社ではこれらの開発技術を展示会などでもPRしており、今後も独自技術で研究開発型のめっき専門企業を目指す。

■製品

インタビュイー

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株式会社ヒキフネ〈製造業〉

総務部取締役部長 鈴木 昌史 氏

企業情報

社名
株式会社ヒキフネ〈製造業〉
所在地
東京都葛飾区東四つ木二丁目4番12号
設立
1932年
事業内容
バレルめっき、Hiフロンめっき、無電解ニッケルめっきなど
資本金
2400万円
従業員数
130名