2022.12.19
「DXって何をすればいいの?」
そのお悩み、「みらデジ」で解決できます

デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション。以下「DX」という。)の必要性が叫ばれる中、「まだ取り組めていない」「何から手をつければ良いかわからない」という中小企業もまだ数多く存在します。そこで、中小企業庁が2022年7月に「みらデジ」というポータルサイトを立ち上げました。“経営課題をデジタル化により解決する”ことを目的に運営されている「みらデジ」について、そのサービス内容や活用の方法を、中小企業庁経営支援部経営支援課 課長補佐 村山 香 氏に伺いました。

村山 香 氏(むらやま かおり)
プロフィール
中小企業庁 経営支援部経営支援課 課長補佐
2016年、経済産業省入省。2021年から現職にて、中小企業の生産性向上のための受発注のデジタル化や専門家派遣等を通じたデジタル化取組の促進といったデジタル化支援策を担当。
デジタル化への裾野を広げていきたい
―― 中小企業庁が運営されている「みらデジ」というポータルサイトについて、それを開始するに至った背景を教えてください。
中小企業庁では、毎年、中小企業白書を出しています。その際、中小企業の方へのアンケートの一環として「デジタル化は進んでいますか?」とお聞きしたところ、すでに取り組まれている会社と、まだこれからという会社とで、大きく2つに分かれていると感じています。
デジタル化にすでに取り組んでいらっしゃる会社は、「今後もIT投資を続けていこう」と思っている場合が大半なのですが、現段階でまだ取り組めていない会社は、「必要性を感じない」と思っている場合が大半です。
コロナ禍でテレワークが増え、オンライン会議といったコミュニケーションツールの導入が進み、ECサイト活用によるオンラインの販売も増えた、といった側面はありますが、まだ全体的に見ると、デジタル化に取り組めている会社と、そうではない会社がはっきりと分かれているんですね。
「みらデジ」は、特に、まだデジタル化やDXに取り組めていない会社に、経営課題を見直し、デジタル化による解決のきっかけを作りたい、という観点で作ったポータルサイトです。2022年7月からスタートしました。

3ステップでデジタル化を身近に
―― 「みらデジ」のサービス内容について、具体的にお聞かせ願えますか?
「みらデジ」にはステップが3つあります。まずステップの1つ目は経営チェック。サイトを開くと、「今すぐお試し!経営課題をチェックする」というボタンがあるので、それを押していただきます。そうするとチェック項目が出てきますので、それらをオンライン上で回答することで、現在の経営課題やITツールの導入状況などを見える化することができるようになっています。
チェック項目は「あなたの経営課題は何ですか」「どのようなITツールを導入していますか」といった簡単なものであり、「デジタル化の進捗度合いについて、自社の立ち位置はどのあたりなのだろう?」「今優先すべき経営課題は何だろう?」ということを他社比較もしながらアウトプットすることで、現状を整理できます。
このステップ1の最大の特徴は、同地域同業種の事業者と取組状況を比較できることです。事前に中小企業約5,000社に同じチェック項目に答えてもらったことにより、業態の似ている他社のツール等の導入状況をお知らせすることができ、「そこが導入しているのなら、うちもやってみようかな」という気づきにつなげていただくことが可能となっています。
ステップ2は、「経営・IT専門家によるサポート」です。ステップ1によりチェック結果が出てきたところで、「結局何から始めればいいの?」「どうやって社内で進めていけばいいの?」となったときに、無料で何度でも相談できるオンラインの窓口を設けています。窓口で対応する専門家は、中小企業診断士やITコーディネーターで、ITスキルはもちろんのこと、経営課題の解決に関しても経験豊かな方々を選定していますので、安心してご相談いただければと思います。
ステップ2で取り組む方向性が固まったら、最後にステップ3として、「いまどきの課題解決コラム」や「デジタル化による経営改善事例」など、中小企業の方々にとって参考となるような専門家の話や他社事例をご紹介しているので、そこから情報収集をしていただくことが可能です。「IT導入補助金」に関する説明や、その活用事例なども掲載しておりますので、「自社の場合はどう活用できるのかな」といったことを照らし合わせながらご覧いただければと思っています。
ご利用に関して、料金は一切かかりませんし、スマートフォンでも簡単に操作できますので、ぜひ一度チェックしてみていただきたいですね。
「みらデジ」は始まったばかり。目標は今年中に10万社
―― 「みらデジ」には、どのような相談が寄せられていますか?
経営課題に関する相談が多く寄せられています。その他に、ITツールの導入に関するご相談、補助金に関するご相談、インボイス制度や電子帳簿保存法などの制度対応に関するご相談があります。
もちろんひと言に「経営課題」といっても、「自社の業務を改善したい」というものから「人材育成や確保が難しい」といったお悩みまで内容はさまざまです。専門家からは、業務実態をヒアリングした上で、事例などを交えた解決のヒントやITツールの紹介、補助金の活用についてのアドバイスを致します。
「みらデジ」に登録するメリットはいっぱい!
―― 相談を受けた会社のその後について教えてください。
「みらデジ」に登録すると、「マイページ」がつくられます。そこにアクセスすれば、いつでも自社のチェック結果を見ることができますし、経営チェック自体、何度でも受けられるので、「◯月◯日の結果はこうでした」といった過去の記録もさかのぼれるようになります。
また専門家相談を受けると、そこに専門家側からアドバイスが入力されるため、振り返りをすることもできます。登録した事業者の承諾があれば、商工会議所や信用金庫といった支援機関もそのページを見ることができますので、「専門家からこういうアドバイスを受けていましたが、その後どうですか?」といった会話を事業者と支援機関との間ですることもできます。
さらに我々事務局の方からも、「ステップ1の経営チェックを受けられましたが、ネクストアクションに向けてステップ2の専門家との相談をやってみませんか?」といったご案内をすることができます。
このように、「みらデジ」に登録すれば、メリットは色々ありますので、ぜひご活用ください。

補助金や専門家相談の支援策情報も一覧でチェック
―― IT導入補助金について教えていただけますか?
IT導入補助金は、ITツールの導入にかかった費用の最大3/4(75%)が補助されるというものです。IT導入補助金の事務局に、ベンダー(ITツールの販売会社)側からツールを登録してもらい、その登録されたツールであれば、導入資金が補助されるという仕組みです。
また、ITツールの購入費用だけでなく、それを社内にどうやって取り入れていくのかという導入計画や、専門家からアドバイスをもらうための費用、社員への研修用の資料作成費などもオプションでつけられますので、うまくセットで活用していただければ良いのではないかと思います。
基本的にはベンダーと二人三脚で申請していただくことになります。中小企業が抱えている経営課題と導入するITツールの機能がちゃんとマッチしているかが審査のポイントになりますので、「みらデジ」も活用しながら、経営課題の見直しをしていただければと思います。
ちなみに、今年度は、12月時点で申請件数は約4.5万件、採択件数は約3.2万件です。
―― 「デジタル化基盤導入枠」は「通常枠」と何が違うのですか?
デジタル化基盤導入枠は、2023年10月に始まるインボイス制度(適格請求書保存方式=売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの)の対応を見据えた内容となっています。
ですので、対象ツールは会計ソフトや決済ソフト等に限定されるのですが、その分補助率を最大3/4まで上げています。さらにソフトウェアと合わせて、パソコンやタブレット等の購入費も補助の対象となります。
例えば、決済ソフトとタブレットを組み合わせて、レジとして活用することもできるんです。
―― 他にはどのような補助金があるのでしょうか?
「みらデジ」のサイトの「みらデジ知恵袋」に「経営支援施策リンク集」というバナーがありますので、そこを押していただくと、中小企業庁などが実施している補助金の一覧を見ることができます。
IT補助金や、「中小企業119」といった専門家によるサポート支援を紹介しています。これは、専門家を中小企業へ実際に派遣する対面のサービスです。初回は無料で、2回目以降は有料(最大5回まで)となりますが、比較的低価格で活用可能ですのでぜひ活用してみてください。

※ 経営課題に対して、支援機関が専門家を派遣して課題解決をサポートします: 中小企業119
※ 「経営支援施策リンク集」
デジタル化は、
経営課題を解決するための1つの手段
―― 中小企業がデジタル化を押し進めるにあたって、経営陣がなすべきこと、持つべきマインドとは何でしょうか?
デジタル化やDXは、それ自体が目的ではなく、あくまで現在抱えていらっしゃる経営課題の解決のための1つの手段だと考えています。例えば、今物価が高騰している中で、取引先との価格交渉などにおいては、これまでの取引データを見つつ、「ここの原料が高騰しているから取引価格を変更したい」と論理的に交渉していくことが可能だと考えられます。
また人材確保の点でも、まずは業務が効率化することで省人化される部分もありますし、さらに最新技術を導入することで、「この会社は魅力的だな」という印象を持ってもらえるかもしれません。
コロナ禍における厳しい事業環境の中で、従業員にお給料を支払って事業継続していくときこそ、経営課題を解決して利益を上げていく必要があります。パソコンやスマートフォンの活用から始め、ITツールや蓄積されたデータも活用すれば、取引先を増やしていくといったことも十分可能です。ですから、「デジタル化は、経営課題を解決するための手段の1つである」と捉えてもらえたら良いですね。

インボイス対応も視野に入れて
もっと「みらデジ」を活用しよう
―― 中小企業の経営陣に向けてメッセージをお願いします。
まずは業務フローを“見える化”するだけでも、「ここを効率化しよう」とか「あそこは無駄が多いな」といった気づきを得ることができるはずです。そして現場の方も含めて組織全体で、より良い方向へと変えていくのが、経営状況を改善する近道なのではないでしょうか。
これから先のことを考えるためには、まずは振り返りが大事で、振り返ったときに、「ここを改善・効率化するためにITツールを導入しよう」という解決方法が出てくるのだと思っています。
何から手をつけたら良いか迷われたときは、ぜひよろず支援拠点、商工団体、地域金融機関といった支援機関に相談してみてください。
支援機関としても、業務フローが見える化しているとアドバイスがしやすくなりますし、さらに「みらデジ」のマイページでITツールの導入状況もわかれば、より的確なサポートをすることができるはずです。
2023年10月1日に始まるインボイス制度のことも視野に入れ、全国の中小企業の皆さまに、ぜひ「みらデジ」を活用していただき、経営課題の解決につなげていただければと思っています。