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2018.06.29

見積もりや指示書など
手を付けやすい事務系からスタートして
負担の少ないIoT構築がポイント

電化皮膜工業株式会社

「顧客からの問い合わせに振り回されず、本来の営業ができるようになってきました。現場も少しずつ変わってきています」と、IoTにより付加価値の高い仕事が実現しつつある、電化皮膜工業。推進担当の営業・品質マネージャー廣門伸治氏は「規模は小さくても、つながることで感性とこだわりの日本のものづくりを変えるイノベーションになる」と改善に手ごたえを感じている一人だ。

中小企業のIoT導入は事務系作業の見直しから

電化皮膜工業は東京都大田区矢口で1947年から、アルミ表面処理とめっき化工を行なってきた。製品はすべて顧客から依頼された部品で、期日内に指定された表面加工処理を施して、返送している。
全国のめっき工場は1989年の2719件から、2012年には1530件と44%も減少している。生き残りをかけて、多品種小ロット生産による差別化と、多能工化、高付加価値化を目指した業務改善活動のQPS(品質Quality、価格Price、サービスService)活動をスタートさせた。この活動の柱の1つとなったのがIoT導入である。

1947年(昭和22年)の創業以来、金属表面処理一筋できた高い技術力が売りの電化皮膜工業では、表面改質に関する個別の相談も多い。業界では珍しい、黄綬褒章を受賞した現代の名工もいる。

QPS活動で得られたメリット

IoT構築に関しては、外部の協力を得てスタートし、2年目以降もコンサルティング契約を結んで社内のITリテラシーの向上を図っている。
今回はQPS活動の中でも成果を得た分野の成功事例を紹介しよう。

■見積もり管理で、電話での問い合わせに迅速に対応

今から5年前に見積書のデジタル化に着手し、個別管理から一括管理に移行した。
「見積もりは一括管理できておらず、問合せに対して探すのに時間を取られてしまい、肝心の指示書を回すのに支障をきたしていました。」(廣門氏)。最初に、見積もりのアプリからスタートして、指示書発行、出荷管理へとデジタル化したところ、受注商品がどの工程にあるのか、進捗がわかるようになってきた。

■見やすい指示書で過去の失敗を繰り返さない

これまでの指示書は、顧客からのオーダーにより、細かな要求事項を指示書に手書きで記載していたが、タブレット等でデジタル化した。画面も当初は切替えながら入力していたものを、入力頻度を解析するなどして一画面にまとめるなど工夫を図り、過去の履歴も容易に検索できるようになった。構築から約5年かけて完成形に近づけたが、まだ進化の途中だ。特に、一度失敗して作り直しが入った部分などは、再発防止が徹底された。

■トレーサビリティ管理システムで顧客への信頼性アップ

受注品の中には一般製品とは別に、MIL(ミリタリースタンダード)という航空宇宙防衛にかかわる作業がある。トレーサビリティが求められ、連番でバーコード管理されていたが、これにプロセスデータを組み合わせて一元管理するのがIoT構築の大きな目玉だった。「理想とする形までは遠く、この部分はもう少し、焦らずじっくり取り組みたい」(同)としている。

■出荷管理情報により納期遅れが低減

作業指示書がデジタル化されたことで、出荷管理の進捗が「見える化」され、さらにモニターのボタンを押すだけで情報検索が可能なシステムも加えることで、出荷モレを防ぐことが可能になった。

■ラッキング管理作業でのミスが減少

作業現場では、指示書が添付された製品が棚に置かれており、作業者は納期を確認しながらこのラッキングを実施。その際、小さな製品が大きな製品に重ねられ、置き去りにされるミスが頻発していた。そこで、アプリ上に、ラックのチェック項目を入れ、「完」にチェックが入っているかどうかを確認できるようにした。

■写真やファイルの共有システムで技術情報を共有

めっき化工では、顧客から図面以外に求められる細かな要求項目が多い。製造現場までその指示が伝われば良いが、担当が変わると情報がストップすることも。また、宇宙開発事業など受注回数が少ない作業は、当事者間でも忘れてしまう。そこで、オープンにしたくはないが、重要な製造メモを誰もが現場で見ることができる検索システムを構築している。 2016年からはIVI(Industrial Value Chain Initiative)に参加、同社はサプライチェーンでのリンクを実施している。 2017年は関東経済産局の支援を受けて具体的な仕組みづくりを行っている。
「IoT構築は大変な作業ですが、後の行程に役に立つし、使い回すことができる。それを実感するまでが大変。苦労はするけれど、その後はどんどん自分が楽になっていく。さらに、理解できるようになれば、この情報も入れたいとか、この画面なら見やすいと、具体的な改善意見が出てきて、さらにステップアップできます」と、廣門氏はIoT構築のメリットについて教えてくれた。

タブレット等を活用し営業、製造側双方で工程・出荷管理状況の把握、顧客の問い合わせ素早い対応が可能となった。

インタビュイー

interviewee

電化皮膜工業株式会社

営業・品質マネージャー 廣門 伸治 氏

企業情報

社名
電化皮膜工業株式会社
所在地
東京都大田区矢口3-5-10
設立
昭和48年1月1日
事業内容
アルミ表面処理 クロム系表面処理 その他金属・表面処理
資本金
1,100万円
従業員数
38名(2018年1月現在)