導入事例 導入事例

HOME 導入事例 株式会社マキノ

2018.06.29

IoTで多品種小ロット生産の
“短納期”に挑戦
工場の稼働率を極限まで高める

株式会社マキノ

マキノ(東京都町田市)は精密板金加工に取り組む先進的なモノづくり中小企業だ。主に試作品を手がけ高度な精度が求められる一点ものを扱う。大量生産できない多品種小ロット生産の”短納期”に挑戦する。IoT(モノのインターネット)という言葉が一般化する以前からIT化を進め、工場の稼働状況の見える化や自動化、データ分析による効率化を実現してきた。

売上を伸ばすためにたどり着いた答え

マキノの町田工場は東京都町田市にある多摩ニュータウンの一画にある。従業員も通勤しやすい立地で、大学のキャンパスも多く閑静で緑も多い。その落ち着いた景観にある工場内部は一般的な中小の製造現場の想定を大きく越える。

清潔感ある工場外観とは打って変わり大型の加工機械が絶え間なく稼働し、加工屋らしい機械音が場内に響き渡る。建屋3階相当の天井高の工場内部は開放感があり、大型の機械が所狭しと並ぶ。その中でも特徴的なのは、大手板金加工機メーカーのアマダ製の材料自動倉庫「HYPER MARS(ハイパーマーズ)」だ。高さ12段×幅18列の材料ラックの規模は材料搬送の速度ともに世界トップクラスという。24時間の稼働で顧客が求める”今すぐ欲しい”を可能にする。

そもそもマキノがこれほどの設備を導入する理由は何なのか。牧野社長は「顧客に納得のいくコストで提供するにはアイテム数を増やし自動化させることが不可欠」と答える。これまで単価が高く、売上高が伸びないといわれていた経営を改革することを目指してきたのだ。たどり着いた答えは、工場の稼働率を極限まで高めること、だった。

稼働率向上への戦いと突きつけられる厳しい現実

しかし、大企業が展開するような量産品と違い、製造業の作業工程の中でも試作開発と呼ばれる領域は、量産前の複雑な形状をした一点ものの製品を作ることが多く、ベルトコンベヤーによる流れ作業はできない。特に精密板金加工は人の手作業に頼る部分が多く自動化しにくい。作業は見積もりから始まり、受注、加工のプログラム作り、抜き加工、バリ取り加工、曲げ加工、溶接加工、洗浄、検査、出荷と進み工程数は膨大だ。工場の稼働率を高めるには、この中から徹底的に無駄を排除しなければならない。ボトルネックとなる発生源を突き止める必要がある。

マキノでは加工機械をネットワークでつなぎ、稼働データをすべて吸い上げるシステムを導入。これにより、機械の稼働データを5種類に分けて管理、内訳は①稼働中②機械の電源を切っている③電源が入っているが作業をしていない④エラーで作業をしていない⑤加工準備の段取り中ーを自動で蓄積する、といった状況把握が可能となった。

データは想像以上に厳しい現実を突きつける。マキノがデータを取り始めた頃の機械の稼働率は全体の20-30%。一つの製品を作るのに70-80%は機械が止まったままだったことが分かった。これにより作業前の準備となる段取りの自動化を積極的に進めた。現在は板金加工の抜きの作業「ブランク加工」は95%、板金加工前の準備をする金型の「段取り作業」は90%を機械による自動化を実現した。それでも稼働率は、曲げ加工60%、治具が必要な溶接加工の10%程度と、まだまだデータが示す改善の余地は大きい。

IoTが示す経営指標

工場のIoT化を進めるには、どういう課題を解決したいのか経営者に考えがなければうまく進まない。マキノでは加工機の稼働時間を蓄積し、設備のメンテナンスのタイミングを計るほか、他の加工機と稼働率を比較し次に買うべき加工機の設備投資計画に役立てている。IoTによるデータ分析が、経営の一手をどこに打つかの重要な指標となる。

マキノが工場の機械にIoTを本格的に導入する以前は人を軸にしたIoTの導入から始めた。全従業員にPDA端末を持たせ、就業状況を入力、業務の見える化を進めた。製品と人を結びつけ、すべての行動記録を細かく記録する。従業員の行動を数字で把握することで実力を明確にし、成果を可視化した。これが本格的なIoT導入の土台になった。現在はi Pod touchを使い担当者、工程、時間、工数などを入力。さらに人と業務、品物を紐付けることで生産管理し、稼働状況の最適化を図っている。

IoTのその先へ

マキノの2000年頃の年商は2億円程度。現在の町田工場の移転を機に稼働率を高め2006年には6億円を達成した。現在はIoTによる最適化を図り2019年の売上高の目標は15億円と順調な成長軌道を描く。ただ、稼働率と生産性の高まりにより出荷数が増え過ぎ、出荷工程が追いつかない状態にある。そこでマキノは2018年2月、町田工場に隣接する敷地に自動倉庫システム「マキノパーツセンター」を新設し、稼働させた。1日あたりの製品出荷数を1000点から2400点に増やす計画だ。牧野社長は「大事なのは”IoTはソフトである”ということ。取得したデータをどう使うかが重要だ」と強調する。データとにらみ合いボトルネックとなる課題をつぶす日々は終わらない。

インタビュイー

interviewee

株式会社マキノ

代表取締役社長 牧野 拳一郎 氏

企業情報

社名
株式会社マキノ
所在地
東京都町田市小山ヶ丘3-10
設立
1969年10月1日
事業内容
半導体製造装置関連部品、通信機器関連部品、その他精密板金部品の加工
資本金
2,000万円
従業員数
40名