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2018.06.29

高度な専門性とホスピタリティが求められる
コールセンター業務
AIお問い合わせシステムの導入で
想定以上の効果を創出

大塚製薬株式会社/木村情報技術株式会社

トータルヘルスケアカンパニーとして世界的に知られる大塚製薬(東京都千代田区)は近年の機能性表示食品等の取り扱い増加に伴い、消費者からの相談や商品情報の提供に、より詳細できめ細かな対応を求められるようになっている。

そこで問い合わせ支援ツールとして同社お客様相談室に導入したのが、木村情報技術(佐賀県佐賀市)が提供するAIを活用したお問い合わせシステム。
同製品の導入は期待以上の成果を生み出しただけでなく、様々な固定概念まで覆すことになったという。

その経緯と導入後の効果を、大塚製薬・お客様相談室室長の坪井悦子氏に伺った。

課題は人材確保とその育成

「2000年前後に働き盛りだった世代の引退は、お客様相談室業界最大の危機」だという坪井氏。時代とともに豊富な知見を身につけた「ベテラン」が、大量に現場を去ることになる。人材確保はもちろんその育成は、消費者と直に接するセクションを有する企業にとって喫緊の課題だ。
「大塚製薬でもサプリメントなど機能性訴求製品についてのお問い合わせやご相談に対し、従来以上にお客様に寄り添うような丁寧できめ細かい応対をしなければならなくなっています」(坪井氏)と言う。そこで検討したのがAIの活用。先述した課題解決を図るべく、「人材の短期間での育成」「高精度の応対」「遠隔地でも東京と同等の人材育成と同品質のサービスの提供」の3点のクリアは絶対命題。これに加えコストの面も当然無視できない。数多くの提案を比較検討する中、最終的に採用されたのが、木村情報技術株式会社の「AI-Q」だった。

欲しいのは問題を解決し人間を活かすAI

「AI-Q」はIBM Watson日本語版の自然言語分類機能を活用した、社内外からの問い合わせを支援するシステム。木村情報技術・AI事業部の仲宗根徹氏は、その特徴を「データはQ&A形式で学習させますが、自然言語を理解しているためキーワード一致の制約にとらわれません。チャットボットがキーワードに基づいて高精度の検索を行い、適切な回答を引き出してくれるので、検索の手間やそのストレスが大幅に軽減されます。またデータの作り込みにプログラミングの知識は必要なく、コンセプト自体もユーザが設定できる。常にデータ更新し続けられるので正答率が上がり、それがAIを“育てる”感覚となって楽しみや愛着にもつながります」と話す。またクラウドサービスのため、ネット環境があればアクセス場所を問わず、同一画面を見ている誰もが同じ回答を出すことができる。
また、誤答は、ユーザがフィードバックに記録、これを管理者がAI-Qに反映していくことで回答精度が高めていくことができる。誤答のフィードバックを通じ、AIもユーザも同時にスキルアップできるのも大きな魅力だ。

坪井氏によると、導入の決め手になったのは「AIというのは壮大な夢を持ったツールだが、現時点の可能性はここまで」という木村情報技術AI事業部の伊藤敦氏の明言だった。「AIがあればオペレータは不要、何でもできると断言する会社もあったが、機能を特化・深化して使いたいという要望を丁寧に汲み取ってもらえたことも大きい。どんなに賢いAIでも、熟練オペレータの『お辛かったでしょう』のひと言にはかないません。最後にはやはり“人間”が必要なんです」(坪井氏)。

効率化と高品質でパーソナルな対応に貢献

今回の「AI-Q」導入で実際の運用までに要した期間は約半年。実際の運用を通じ、人材育成に活用できる可能性を感じた同社は思い切ったチャレンジを実践する。
いわばAI育ちのリーダーをつくるという試みだ。教育研修のプロがあえて遠隔で「AI-Q」を使いながらスタッフを指導する方法に挑戦。試行錯誤しながらも、育成ノウハウを積み重ね、また未経験者の育成では、通常の研修教育であれば数週間から数カ月はかかるところ、わずか2週間で実戦デビューできるところまでこぎ着けた。こうした成果を重ね、徐々に増員。徳島と大阪にもセンターを設置。現在は、薬剤師と管理栄養士を含む全17名の室員で全国からの問い合わせに応対している。
また、同社は機能性をもつ製品の発売や、各種メディアでの製品紹介などの影響によって問い合わせが急増し、放置呼(応対できない電話)の多発など、対応に苦慮することも多かった。だが、IVR(Interactive Voice Response=自動音声応答装置)と「AI-Q」の組み合わせでこれを解消した。
先ず、IVRで要件を切り分け、相談のみをセンターに誘導。ここからが「AI-Q」の出番だ。予めの想定や序盤に応対したお問い合わせのログから、どういう情報をどう提供すれば購買につながるのかといった高頻度・優先度の高い回答内容が候補として挙がるため、誰でも高品質かつ的確な対応が可能だ。その結果、相談に関わる受電は3割増、スタッフ1人が1カ月に消費者と話している時間は75%増。反対に放置呼は88%削減された。

「AI-Q」導入の成功が新たな視点を生む

「AI-Q」の導入がもたらした効果はそれだけにとどまらない。「これまでは一問一答こそが定型と思い込んでいたのですが、答えは確定しているのだから、重要なのはお客様が何を、どんな単語や言い回しで問うているのかということ。まずお客様の視点で考えるべきだということを、『AI-Q』のデータづくりで実感しました。また、センターは集約しているものという固定概念も覆り、転勤はできないけれど高いスキルを持つ社員の資質を活かすには、その人がいる場所に拠点をつくればいいという発想の転換ができたのも、『AI-Q』のおかげかもしれません」(坪井氏)。
「AI-Q」には検索内容のランキング機能もあり、お客様相談室では1週間で最も多かった問い合わせをリスト化。他部署とも共有し、商品訴求や購買動向の問題解決にも役立てていると言う。「人材育成期間の圧縮、コストパフォーマンス、応対品質の向上と、全てにおいて期待値を上回っている『AI-Q』は大成功事例となりました。データを閲覧したい、ツールとして使いたいという他部署からの問い合わせも増えてきています」と坪井氏。今後も木村情報技術と築いた強力なタッグを糧に、「AI-Q」導入で蓄積したノウハウは攻め経営の武器へと変わりつつある。

オペレータが質問のキーワードをテキスト入力することで誤答のリスクを回避。情報共有も容易でコミュニケーションも密になった。ほとんどのスタッフが「AI-Q」との作業が楽しいと、その“育成”に意欲的だ。

大塚製薬への「AI-Q」導入を担当した、木村情報技術の伊藤敦リーダー(写真右、AI事業部AI導入サポートチーム)と仲宗根徹氏(写真左、AI事業部AI導入サポートチーム※取材当時)。プロジェクトを終えても坪井氏から両氏へ寄せられる信頼は厚く揺るぎない。

インタビュイー

interviewee

大塚製薬株式会社

お客様相談室 室長 坪井 悦子 氏

企業情報【導入先】

社名
大塚製薬株式会社
所在地
東京都千代田区神田司町2-9
事業内容
事業内容 医薬品・臨床検査・医療機器・ 食料品・化粧品の製造、製造販売、販売、 輸出ならびに輸入
資本金
200億円
従業員数
5,634名(2017年12月31日現在)

企業情報【製品提供元】

社名
木村情報技術株式会社 東京支店
所在地
東京都中央区日本橋小網町10-2 丸国ビル 6F (本社:佐賀県佐賀市卸本町6-1)
事業内容
AIお問合せシステム「AI-Q」の販売、各種システムの構築・販売、レンタル及び保守
資本金
2,450万円
従業員数
254名(2018年4月10日現在)